新型コロナウイルス感染拡大によって、売上に大きく影響が出ているお店も多いのではないでしょうか。
私の知人のお店では、
「1日で80名以上のキャンセルがあった」
「週末なのに席が埋まらない」
といった声もあり、非常に厳しい状況に置かれているようです。
また、3月~4月は歓送迎会を始めとした宴会シーズンです。
閑散期である2月の赤字を回収するといったお店も多く、コロナ拡大による企業側の宴会自粛による影響が非常に大きいようです。
この記事では、飲食店(居酒屋)3店舗の予約データを集計し、新型コロナウイルスによる影響と対策についてまとめてみました。
飲食店における新型コロナウイルスの影響
予約データを集計した飲食店は以下の通り。
- 【店舗A】都内の和食居酒屋【単価5000円/50席】
- 【店舗B】地方都市の和食居酒屋【単価4500円/70席】
- 【店舗C】地方繁華街の和食居酒屋【単価4000円/100席】
ウイルスの影響がどの程度出ているか、もっともわかりやすいポイントは「予約件数」と「キャンセル率」の変化。
台帳アプリのデータから2019年と2020年、それぞれの予約データを以下の条件で絞り込みました。
予約受付期間 :1月1日~3月5日
来店予定日:3月1日~3月31日
それでは店舗ごとの集計データを見ていきましょう。
【店舗A】都内の和食居酒屋【単価5000円/50席】
1店舗目は、席数50席ほどの和食居酒屋。
お客の年齢層は40代がもっとも多く、平均単価5000円ほどの大人向けの居酒屋です。
予約件数
3月の予約件数は、2019年に比べて、約半分ほどに落ち込んでおりました。
年 | 予約件数 | 予約人数 | 一組平均 |
---|---|---|---|
2020年 | 25 | 114 | 4.6 |
2019年 | 57 | 280 | 4.9 |
キャンセル件数
予約のキャンセルについては、件数自体はさほど差がないものの、1組辺りの利用者が多い予約のキャンセルが目立ちます。
年 | キャンセル件数 | キャンセル人数 | 一組平均 |
---|---|---|---|
2020年 | 8 | 50 | 6.3 |
2019年 | 5 | 22 | 4.4 |
そもそもの予約件数が大幅に落ち込んでいることに加え、キャンセル件数が増加していることから影響は甚大です。
キャンセル率
年 | キャンセル率(件数) | キャンセル率(人数) |
---|---|---|
2020年 | 32.0% | 43.9% |
2019年 | 8.8% | 7.9% |
キャンセル率は件数・人数のどちらで見ても大幅に増加していることがわかります。
【店舗B】地方都市の海鮮居酒屋【単価4500円/70席】
このお店は、とある地方都市の駅前ということもあり、観光客や出張といった県外からの利用者が非常に多いお店です。
予約件数
店舗A同様に予約件数・人数ともに大幅な落ち込みが見られます。
年 | 予約件数 | 予約人数 | 一組平均 |
---|---|---|---|
2020年 | 50 | 337 | 6.7 |
2019年 | 86 | 627 | 7.3 |
キャンセル件数
予約件数での1組平均が6.7名に対して、キャンセルされている予約の1組平均は10名と、やはり大人数での予約のキャンセルが目立っております。
年 | キャンセル件数 | キャンセル人数 | 一組平均 |
---|---|---|---|
2020年 | 14 | 140 | 10.0 |
2019年 | 12 | 85 | 7.1 |
キャンセル率
利用人数の多い予約のキャンセルが多いことから、人数ベースでのキャンセル率が40%越え。
年 | キャンセル率(件数) | キャンセル率(人数) |
---|---|---|
2020年 | 28.0% | 41.5% |
2019年 | 14.0% | 13.6% |
昨年比較では、3倍以上キャンセルが増えていることがわかります。
【店舗C】地方繁華街の和食居酒屋【単価4000円/100席】
最後の店舗は、とある地方の繁華街に位置する和食居酒屋です。
観光客も訪れますが、地元の人気店といったお店で幅広い年齢のお客さんが訪れるお店です。
予約件数
予約人数では昨年より減少しているものの、件数では昨年より増えている結果でした。
年 | 予約件数 | 予約人数 | 一組平均 |
---|---|---|---|
2020年 | 60 | 400 | 6.7 |
2019年 | 53 | 481 | 9.1 |
予約受付日を確認したところ、人気店ということでコロナウイルスが騒がれる以前から予約が多く入っておりました。
キャンセル件数
昨年と比較するとキャンセル件数では3倍・人数で2倍ほどの数字となっております。
年 | キャンセル件数 | キャンセル人数 | 一組平均 |
---|---|---|---|
2020年 | 20 | 170 | 8.5 |
2019年 | 6 | 85 | 14.2 |
これまでの2店舗と異なり、1組辺りの人数は昨年の方が多いですが、「昨年は100名規模の予約キャンセルがあったこと」が影響しているようです。
キャンセル率
早い時期からの予約が多かった店舗Cですが、キャンセル率で見てみるとこれまでの2店舗同様にキャンセル率の増加が目に見えてわかります。
年 | キャンセル率(件数) | キャンセル率(人数) |
---|---|---|
2020年 | 33.3% | 42.5% |
2019年 | 11.3% | 17.7% |
予約データからわかった新型コロナウイルスの影響は?
3店舗の予約データに共通している点は、
- キャンセル率は【件数では約30%】【人数では約40%】
- 宴会利用など利用人数が多い予約のキャンセルが多い
という結果でした。
企業の宴会自粛や、人が多く集まる場所は避ける呼びかけなど、ニュースで取り上げられている通りですね。
飲食店の新型コロナウイルスへの対策
従業員のマスク着用や手洗いの徹底など、感染を未然防ぐ取り組みは当然行うべきです。
そういった情報は他のメディアで多く取り上げているので、売上が落ち込んでいる今行うべき販促や集客対策を中心に4つほど紹介したいと思います。
クーポンは【プライベート・少人数利用】【若年層】に向けたもの
宴会需要の落ち込みが激しいことから、少人数・プライベート利用に向けたクーポンの打ちだしを行うと良いでしょう。
また、年齢の若い客層はいまだに動いている傾向があるため、若年層の獲得に力をいれてみるのも一つの手です。
ただし、そもそも外食需要が落ち込んでいることから、過剰な値引きや安売りは単価低下に繋がり、結果的に売り上げを落としてしまう可能性もあるので注意が必要です。
需要が落ち込む今ではなく、先を見据えた販促に力をいれよう
ウイルスが沈静化するまで、どうしても売上低下は避けられないでしょう。
こういったときに力をいれるべきは、ウイルスの鎮静化後の利用を想定した「見込み客」の獲得です。
具体例としては、
- 「キャンセルの連絡時に次回予約時に使えるクーポン提供」
- 「クーポン販売サイト等でのチケット販売」
といったものが挙げられます。
予約データの事例として挙げた店舗Aでは、登録無料でネット販売ができる「BASE」で、利用期限無し・通常利用よりお得なコースクーポンを販売しております。
キャンセルが入った際には、クーポン販売ページをショートメールで送るといった取り組みを行っているようです。
こんな時期だからこそ来店頂いたお客様へのお礼
当然のことですが、こんな時期だからこそ来店頂いたお客様へのお礼とリピート促進に力をいれましょう。
- お礼メールの送信
- この時期来店された方限定で「お食事券」をプレゼント
小さなことでも良いので、いつも以上におもてなしの心を意識した取り組みを徹底すると良いでしょう。
不特定多数が触れる現金決済はなるべく避ける
不特定多数の人が触れる現金は、衛生的なリスクが高くウイルスの感染経路の一つになるうるとされています。
三菱UFJ銀行の従業員がコロナウイルスに感染している事例があり、現金を介して感染した可能性も否定できないようです。
こうしたリスクを少し減らすために、キャッシュレス決済を促すといった取り組みもウイルス対策になるでしょう。
現在では、「無料で導入可能なカード決済サービス」も多く、キャッシュレス対応していないお店はこの機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

【まとめ】先を見据えた取り組みを意識しよう
コロナウイルスによる飲食店の影響と対策についてまとめてみました。
飲食店が大きく影響を受けているということは、ニュースやSNSで目にしたことはありますが、実際に予約データを見てみると想像以上に厳しいといった印象でした。
この記事で挙げている対策例は、通常営業を続けるお店に向けてのものですが、あまりに売上が厳しい場合には「休業や時短営業といった措置を取る」といった選択も必要でしょう。
いずれにしても需要が落ち込んでいる今ではなく、ウイルスによる影響が沈静化した先を見据えた対策に力をいれることをおすすめします。
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